はじめに
多くの企業がファイルの管理にファイルサーバーを使用しています。ファイルサーバーをオンプレミスで構築している場合、データファイル の増加によるストレージの容量不足や、OS・ソフトウェアのアップデートなどメンテナンスが発生するだけでなく、災害対策なども考えなければなりません。
当社は、2022年7月13日(水)にAmazon FSx for NetApp ONTAP活用セミナーを開催しました。「Amazon FSx for NetApp 最新お客様事例! FSxの実績が豊富な富士ソフトの導入ノウハウをご紹介」と題して、出堀 琢麻(富士ソフト株式会社 ソリューション事業本部 インフラ事業部 クラウドソリューション部 第1技術グループ 主任)が講演。「Amazon FSx for NetApp ONTAP」を活用したファイルサーバーの構築とその移行について、事例を交えて説明しました。
本コラムでは、そのセッションの内容をダイジェストでご紹介します。
※Amazon FSx for NetApp ONTAP活用セミナー
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ファイルサーバーのクラウド化が注目される理由と移行への不安
オンプレミスで構築したファイルサーバーには、2つの課題があるといわれています。
1つ目はハードウェアの運用での課題です。データ容量の増加に伴って、定期的なストレージの増設対応が求められます。電源やネットワークのほか、物理的な場所も必要なため、初期投資が高額になります。
2つ目はソフトウェアの運用での課題です。OSやソフトウェアのアップデート対応に加え、保存されたデータを適切に守るためには、バックアップの管理やセキュリティ対策、災害対策も考えなければなりません。
こういった課題を解決する方法として、クラウドが注目されています。クラウド上にファイルサーバーを構築した場合、ハードウェアやソフトウェアの管理は必要ありませんし、バックアップやセキュリティ対策についても様々なサービスが提供されています。機器や設置場所の確保も必要なく、要件に合わせてホストやストレージの性能を選択できるため、コスト面でのメリットもあります。特にサーバーの老朽化が進み置き換えを検討しなければならない状況では、クラウド移行を検討する企業も多いのではないでしょうか。
しかし、クラウド移行には、様々な不安がつきまといます。移行に期間がかかるのではないか、移行のコストは高額なのではないか、移行後の操作性や運用方法が移行前とは大きく異なるのではないか、など挙げるとキリがありません。
Amazon FSx for NetApp ONTAPの4つのメリット
各社から、クラウド移行の不安解消につながる様々なサービスが提供されています。その中の1つに、アマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供する「Amazon FSx for NetApp ONTAP」があります。フルマネージド型共有ファイルサーバーで、AWSのクラウド「Amazon FSx」からストレージOS「NetApp ONTAP」を利用できます。その導入のメリットを4つ紹介します。
1つ目は、サーバーのメンテナンスをAWS側からフルマネージドで管理できることです。何らかの障害が発生した場合、AWS側で自動的に復旧されますので、ユーザー側への影響を最小化できます。
2つ目はコストの最適化です。Amazon FSxではプライマリー層といわれる高性能なSSDと、キャパシティプール層といわれる安価なハードディスクをうまく組み合わせることで、コストを最適化できます。
3つ目はサーバー管理における作業負荷の削減です。AWSのサービスを活用することで、バックアップなど作業の自動化が実現できます。
4つ目はDR(災害復旧)としての活用です。オンプレミスで構築・運用している環境に有事が発生した場合は、機器の状況確認や故障による復旧作業、代替機器の調達などに時間がかかり影響が大きくなります。しかし、Amazon FSx for NetApp ONTAP であれば自動で復旧され状況確認だけで済みますので、災害対策としても利用できます。
ファイルサーバーの移行の進め方
ファイルサーバーの移行先の決定後、移行手順を考えます。移行には、調査、設計、検証、移行、利用という5つの工程があります。
- 調査工程
現行の環境で利用しているネットワークの構成やファイルサーバーの要件を調査し、移行先の環境に求める要件や移行データの転送条件を明確にします。 - 設計工程
調査工程で明らかになった要件をもとに環境設計、移行設計を行います。データ転送でどのようなツールを使用するのか、移行方法をどうするのかによって、ファイルサーバー移行にかかる時間が変わります。移行設計で、余裕を持ったスケジュールを確保することによって、失敗のリスクを減らすことができます。 - 検証工程
環境設計、移行設計が完了したら移行環境を構築し、ファイルサーバーを移行する前に、まずは構築した環境が要件を満たしているかを検証します。ファイルサーバーの移行完了後に様々な要件を検証しようとすると、何らかの問題が発生した際にリカバリーに時間がかかる、環境変更が難しいなど、検証が困難になる場合があります。 - 移行工程
検証後は、移行工程に進みます。移行は設計通りに進むことは少なく、データ転送の失敗やスケジュールの遅延など、様々な問題が発生します。移行作業を進める際には、これらの問題について、事前に対応策を検討しておきましょう。例えば、データ転送失敗の原因としては、データのアクセス権限不足などが考えられます。移行対象のファイルへのアクセス権限の追加や実行ユーザーの変更など、想定される問題に対しての対応方法を明確にしておくことが重要です。
全てのデータを転送し移行先のファイルサーバーの確認が完了したら、ファイルサーバーをオンプレミスからクラウドに切り替えます。 - 利用工程
移行後のクラウド環境での利用を開始します。
お客様事例:性能、移行、運用要件の指標で移行を検証
今回ご紹介する事例では、お客様が抱えている課題が3つありました。
- サーバーの経年劣化。リプレースが急務
- 事業の拡大に応じた柔軟なリソース増強
- 可用性のさらなる強化
お客様は、単一のデータセンターを利用されており、現状以上の可用性を実現したいという要望もありました。
この事例では、性能評価、移行評価、運用要件評価の指標で調査を行いました。
性能評価は、ファイルがアクセスできるかどうか、レスポンスを検証しました。移行評価では、robocopyというWindowsコマンドを使用して、ファイルの転送速度を検証しました。運用要件評価は、これまでのお客様環境におけるファイルサーバーの利用手順がそのまま利用できるのか、何らかの修正が必要なのかを検証しました。
結果として、全ての要件を満たすことが確認できました。スケジュールとしては、調査、設計、検証の工程に対して4カ月ほどの期間を確保し、予定通りに完了しました。
Amazon FSx for NetApp ONTAPを活用したファイルサーバー移行の成功のポイント
Amazon FSx for NetApp ONTAPを活用したファイルサーバーへの移行を成功させるためのポイントは、余裕のあるスケジュール、明確な要件、Amazon FSxの理解だと考えます。
例えば、機器のEOLが2、3カ月後に迫っている場合、移行の5つの工程を考えると既にスケジュールに余裕がありません。全ての工程に十分な対応が可能で、かつ余裕のあるスケジュールが移行の成功につながります。
移行の調査としてファイルサーバーの要件整理が必要ですが、移行後に本当に必要な要件を明確にすることが重要です。様々な人やシステムがデータを利用しますので、24時間365日のサービス提供が必要になる場合もありますし、アプリケーションによってはある程度の応答速度を求められる場合もあるでしょう。稼働時間や必要な性能を明確にして要件を把握することが移行の成功につながります。
そして、使用するシステム、Amazon FSxを深く理解することが、システムを最大活用するために重要です。特に、性能、運用、コストについては注意が必要です。
- 性能
Amazon FSxにおいてファイルサーバーの容量を変更するとき、一部の項目では拡張しかできないケースがあります。そのため、一度拡張してしまうと元に戻せません。また、AWSはフルマネジメントで提供されているサービスのため、性能上限があります。 - 運用
Amazon FSxのアップデートは自動で行われるので注意が必要です。アップデートによって、新たに機能が追加されるため、随時、最新の情報をキャッチアップすることが運用改善につながります。例えば、Amazon CloudWatchを活用した監視やAWS Lambdaを用いた運用の自動化、AWS Backupを使用したバックアップの自動化など、様々なAWSのサービスを活用することで、効率的な運用が可能になります。随時システムが改善されるクラウドサービスのメリットを活かして導入効果をより多く享受することで、ファイルサーバー移行が成功につながります。 - コスト
AWSは基本的に従量制料金が適用されています。Amazon FSxも使用量に応じて課金されますので、必要なときに必要な分だけを利用するスモールスタートでの利用をお勧めしています。
いかがだったでしょうか。自社でクラウド移行の全てをキャッチアップして運用していくのはとても大変ですので、AWSを熟知したパートナーを活用することも重要です。
弊社は、調査、設計、検証、移行、保守サポートまでトータルでクラウド移行をご支援いたします。
ファイルサーバーの移行をご検討の方は、ぜひ富士ソフトにお声掛けください。
関連サービスについて、詳しくはこちらをご覧ください
アマゾン ウェブ サービス(AWS) ファイルサーバー クラウドパック
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