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グローバルイベント「UiPath FORWARD + TechEd」参加レポート—生成AIで加速するテスト自動化の最前線

「UiPath FORWARD」は、世界最大規模のオートメーション業界のグローバルカンファレンスであり、米国UiPath本社が主催する注目のイベントです。7回目を迎えた今年は、世界中から約4,000名の参加者がラスベガスのMGM Grandに集結し、2024年10月21日(月)から24日(木)まで熱気あふれる4日間が展開されました。私は昨年に続き、現地でこのイベントに参加する機会に恵まれました。
今年のテーマは「TRANSFORM WITH AI」。「エージェンティックAI」、すなわちAIによる自立した意思決定とアクションを実現するための最先端技術が次々と発表され、特にテスト自動化の分野で他に類を見ない、革新的な機能が注目を集めました。本コラムでは、これらの新しいテスト自動化機能にスポットを当て、その魅力を余すところなくお伝えします。

AIを組み込んだ機能のロードマップ

発表されたロードマップによると、すでに2024年7月に公式リリースされた「2024.6」バージョンのAutopilot for Testersを皮切りに、今後1年以内にAIを組み込んだ新機能が20以上も追加される見通しです。

※掲載の資料はイベントにて投影された画面を撮影したものです。

機能機能搭載製品リリース※
Quality-check requirements要件の品質評価Test Manager2024.6
Generate tests for requirements要件によるテストケース生成Test Manager2024.6
Generate tests for SAP transactionsSAPトランザクションテストケースの生成Test Manager2024.6
Generate test insights reportsテストインサイトレポートの生成Test Manager2024.6
Generate coded UI automationUIオートメーションコードの生成UiPath Studio2024.6
Generate synthetic test data合成テストデータの生成UiPath Studio2024.6
Perform fuzzy verificationsファジー検証UiPath Studio2024.6
Generate expressions式の生成UiPath Studio2024.6
Refactor coded test automationコード化されたテストオートメーションのリファクタリングUiPath Studio2024.6
Generate coded API automationAPIオートメーションコードの生成UiPath Studio2024.6
Search project in natural language自然言語によるプロジェクト検索Test Manager2024.10
Import manual test cases手動テストケースのインポートTest Manager2024.10
Generate low-code test automationローコードテストオートメーションの生成UiPath Studio2024.10
Search UiPath documentationUiPathドキュメンテーションの検索UiPath Studio2024.10
Fix validation errors in test automationテストオートメーション内検証エラーの修正UiPath Studio2024.10
Identify tests requiring updates更新が必要なテストを特定Test Manager2025.4
Detect obsolete tests廃止されたテストを検出Test Manager2025.4
Compare PDF files & user interfacesPDFファイルの比較&UIの比較UiPath Studio2025.4
Self-heal test automation(Healing Agent )テストオートメーションの自己修復UiPath Studio2025.4
Generate recurrent test reportsテストレポートの反復生成Test Manager2025.4
Plan,build,analyze load test scenarios負荷テストシナリオの計画、構築、分析Test Manager2025.4
※リリースは変更される可能性があります。

要件の品質評価(Quality-check requirements)

Test Managerに登録された要件や要件定義書を、AIが多角的に分析・評価してくれる機能が注目を集めています。例えば、要件が十分に定義されていない箇所や、仕様に改良の余地がある点を洗い出すだけでなく、セキュリティ、アクセシビリティ、コンプライアンスのガイドラインもアップロードしておくことで、それらを基準にした要件の整合性チェックも自動で行ってくれます。まさに、上流工程から品質を高める強力なサポートです。
さらに、アップロードするファイルのフォーマットや記載方法に決まりはなく、Word、Excel、TXT、PNG、JPG、PDF、BPMNといった多様な形式に対応しているため、プロジェクトで使用している資料をそのまま利用できます。

要件によるテストケース生成(Generate tests for requirements)

要件やアップロードされた設計書から、生成AIがスマートにテストケースを生成します。各テストケースには、生成されたテスト手順と期待される動作が丁寧に格納されており、そのまま手動テストにも活用できる状態に仕上がっています。この革新的な機能を活用することで、テスト設計の効率化が図られ、設計漏れのリスクも大幅に軽減されます。

SAPトランザクションテストケースの生成(Generate tests for SAP transactions)

SAPのヒートマップや変更影響分析レポートから、手動テスト用のテストケースを簡単に生成できます。さらに、生成AIの機能であるAutopilotを活用し、SAPトランザクションに関する詳細なサポートドキュメントを提供することで、より正確で有用な手動テスト用テストケースが生まれます。この新しいアプローチにより、テストの質が向上し、作業の効率化が実現します。

テストインサイトレポートの生成(Generate test insights reports)

生成AI機能のAutopilotを活用することで、蓄積された膨大なテスト結果から自動的に洞察を引き出し、テストレポートを生成できます。例えば、過去30日間のテスト全体の失敗率や、最も失敗率の高いテストケース、その原因、さらには改善のための推奨事項がAutopilotによって明示されるため、テスト失敗の原因を深く理解するのに非常に役立ちます。

UIオートメーションコードの生成(Generate coded UI automation)

テストコードを開発するUiPath Studioでは、Test Managerで生成されたテストケースのリストが一目で確認できます。生成したいテストケースを指定するだけで、生成AIがC#で構築されたUIオートメーションのテストコードを瞬時に自動生成します。この迅速なプロセスにより、短時間で大量のテストコードを生産できるため、作業の効率が飛躍的に向上します。

合成テストデータの生成(Generate synthetic test data )

自然言語での入力を通じて、ユーザーのテストニーズにぴったり合ったテストデータを自動生成できます。これにより、複雑な手作業を省き、迅速かつ効率的に必要なデータを手に入れることが可能です。

ファジー検証(Perform fuzzy verifications)

生成AIモデルを活用したGenAIアクティビティとの組み合わせにより、さまざまなファジー検証が実現します。従来の厳密な式による検証に代わり、プロンプトを用いた自然言語での判定が可能になり、これまで人間にしかできなかった検証作業にも適応できるようになります。この革新的なアプローチにより、より柔軟で直感的な検証プロセスが実現します。

式の生成(Generate expressions)

UiPath Studioでは、式エディターによって手動で式を記述する必要がなく、Autopilotのプロンプトを使って簡単に式を生成できるようになりました。単純な式だけでなく、正規表現にも対応しており、多様なニーズに応えます。リリースからわずか3ヶ月で、すでに17万件以上の生成リクエストが寄せられているこの機能は、ユーザーの期待に応える革新的なソリューションです。作業を効率化し、時間を大幅に節約する力強いサポートになります。

コード化されたテストオートメーションのリファクタリング(Refactor coded test automation)

Autopilotにプロンプトを提供することで、既存のコード化されたテストオートメーションをリファクタリングすることが可能になります。この機能により、テストプロセスをより洗練させ、効率を向上させることができます。

APIオートメーションコードの生成(Generate coded API automation)

Autopilotによるコード生成は、UIオートメーションにとどまらず、幅広い領域に対応しています。コメントに記載されたURLやAPIキーなどの情報を基に、APIオートメーションも自動生成することが可能です。この機能を活用することで、さまざまな自動化ニーズに応え、開発プロセスを一層効率化できます。

自然言語によるプロジェクト検索(Search project in natural language)

自然言語を使ってTest Managerに格納されている情報を簡単に検索できる機能を備えています。たとえば、過去30日間で失敗したテストセットに割り当てられたテストケースを迅速に検索し、その結果からエクスポートや編集、削除といったアクションを続けて行うことができます。この機能を活用することで、管理のアクセス性やメンテナンス性が大幅に向上し、テストプロセスの効率化を実現します。テスト管理を一層スムーズにし、より効果的な運用をサポートします。

手動テストケースのインポート(Import manual test cases)

Excelで作成した手動テストの手順を、Test Managerにスムーズにインポートできます。インポート可能なExcelフォーマットは固定されておらず、手順の記載が自動的に解釈されるため、特定のフォーマットに変更する手間はありません。この柔軟性により、手動テストの管理がさらに簡単になり、効率的な運用が実現します。

ローコードテストオートメーションの生成(Generate low-code test automation)

C#によるコードの自動生成だけでなく、UiPathユーザーが慣れ親しんだローコードでの自動生成も可能です。この機能はUIオートメーションに加え、APIオートメーションにも対応しており、自動生成されたテストコードはC#の知識がないユーザーでも簡単に扱えるという利点があります。これにより、幅広いユーザーがテスト自動化の恩恵を受けられるようになり、効率的な開発が実現します。

UiPathドキュメンテーションの検索(Search UiPath documentation)

UiPath Studio内のAutopilotに自然言語の質問を投げかけることで、公式ドキュメントから関連情報を検索し、要約して表示できます。この機能を活用することで、必要な情報を迅速に得られ、作業効率が大幅に向上します。あなたの疑問を瞬時に解決し、よりスムーズな開発プロセスをサポートします。

テストオートメーション内検証エラーの修正(Fix validation errors in test automation)

実行時やワークフローアナライザーでエラーが発生した場合、Autopilotがそのエラーを修正するための提案を迅速に提供します。この機能により、問題解決がスムーズになり、開発プロセスの中断を最小限に抑えることができます。作業を効率的にサポートし、迅速な問題解決を実現します

更新が必要なテストを特定(Identify tests requiring updates)

要件が変更されると、テストケースにも更新が必要になりますが、その変更を特定できるため、メンテナンスに非常に役立ちます。この機能を活用することで、テストケースの管理がより効率的になり、迅速な対応が可能になります。テストプロセスを一段とスムーズにし、効果的なメンテナンスをサポートします。

廃止テストを検出(Detect obsolete tests)

不要となったテストケースを検出できるため、テスト整理に非常に役立ちます。この機能を利用することで、不要なテストケースを迅速に特定し、効率的な管理が可能になります。テストプロセスを一層整然とし、効果的な運用をサポートします。

PDFファイルの比較&UIの比較(Compare PDF files & user interfaces)

帳票のテストや画面のUI検証を、より洗練された方法で行えるようになります。従来の単なるピクセル単位の比較にとどまらず、AIの力を借りたインテリジェントな比較検証が実現。検証の結果は、差分がハイライト表示されるため、一目で異なる箇所を把握できます。この新しいアプローチにより、効率的かつ精緻な検証作業が可能になります。

テストオートメーションの自己修復(Self-heal test automation(Healing Agent))

操作対象のアプリが変更された場合など、テスト実行中にエラーが発生した際もAutopilotがリアルタイムで解析を行い、自己修復を試みてテストを継続します。たとえば、ターゲットセレクタの変更や予期しないポップアップの出現など、さまざまな状況に柔軟に対応可能です。自己修復が行われると、通知とともに修正候補が提案されるため、テストコードへの反映もスムーズに行えます。また、WebアプリだけでなくWindowsデスクトップアプリにも対応し、機能の有効・無効設定も可能です。この仕組みにより、テストのやり直しによるロスやメンテナンス負荷を大幅に軽減し、効率的なテスト環境を実現します。

自己修復した情報をOrchestratorで確認するデモ

UiPath Studioで自己修復した処理をテストコードに適用するデモ

テストレポートの反復生成(Generate recurrent test reports)

Autopilotを活用すれば、テストレポートの生成をスケジュールすることが可能です。毎日、毎週、あるいは毎月のダイジェスト形式で、必要な情報をタイムリーに受け取れます。たとえば、安定性の問題に関する詳細や、失敗率が高いトップ10のテストケース、さらには頻繁にメンテナンスが必要な懸念のあるテストケースに関する情報などを含めることができます。レポートの内容は自然言語でプロンプトに指示するだけで簡単に設定できるため、手間なくお好みの情報を手に入れられます。この機能により、テストの品質管理が一層効率的に行えるようになります。

負荷テストシナリオの計画、構築、分析(Plan,build,analyze load test scenarios)

UiPath Test Suiteに待望のパフォーマンステスト機能が新たに追加されます。この機能により、アプリケーションの自動テストケースを再利用し、大規模な負荷をかけることで、パフォーマンスを正確に測定することが可能になります。さらに、Autopilotの力を借りれば、テストシナリオの生成やテストレポートの作成、そしてその分析も自動化されるため、サービス低下の根本原因を迅速に特定する手助けとなります。この新しい機能は、より高いパフォーマンスを実現し、アプリケーションの信頼性を向上させる大きな武器となるでしょう。

Agentic Test Automationを使った未来のテスト作業のデモンストレーションを公開

Test Managerに搭載された生成AIを活用したチャットボットと自然言語で対話しながら、非定型かつ複雑なタスクにおいてもテスト作業をエージェントがスムーズに行います。例えば、ユーザーのニーズに応じたテストケースやテストコードの生成、リクエストに基づくテスト実行など、幅広い機能を提供します。リリース時期は未定ですが、将来的にはエージェントとの対話だけでテストに関わるすべての作業が自動化される時代が訪れるかもしれません。この革新的なアプローチにより、テストプロセスが一層効率的かつ直感的に進化することが期待されます。

チャットボットとの対話の中でテストコードも自動生成

実行を指示すると裏で順次テストが実行される

AIテスト自動化についてUiPath Test Suiteの製品責任者とミーティングを実施

富士ソフトでは、2024年7月にリリースされた生成AI搭載のAutopilot for Testersの検証を進めており、製品機能強化に関する要望をディスカッションするために、UiPath Test Suiteの製品責任者であるGerd Weishaar氏とのミーティングを本カンファレンス開催地で実施しました。特に重要な要望として、要件から生成したテストケースの網羅性が品質保証に与える影響を挙げ、生成された各テストケースの根拠を示す機能など、全7つの項目について活発な意見交換を行いました。製品チームはユーザーのニーズを積極的に取り入れる姿勢を示しており、いくつかの項目については、これまでにない非常に良いリクエストとして高く評価され、ぜひ取り入れたいとの前向きな回答をいただきました。
長年にわたりテスト自動化に大きな革新がなかった中で、AIの進化がもたらすこの変革により、まさにテスト自動化の新時代が到来していることを実感しています。そして、今回発表された新機能にもAI技術が随所に組み込まれており、さらなるQCD(品質・コスト・納期)の向上に強い期待を寄せています。

ラスベガスでのディスカッションの様子

富士ソフトのRPAソリューション UiPathについてはこちら
UiPath - 富士ソフトのRPAソリューション

 

 

この記事の執筆者

塩見 潤Jun Shiomi

エリア事業本部
西日本支社 インテグレーション&ソリューション部
ITアーキテクトグループ
課長 / フェロー

RPA UiPath