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クラウド技術の“今”と“未来”が集まる場所「Google Cloud Next 2025」に参加しました

はじめに:「Google Cloud Next」とは

「Google Cloud Next」は、Google Cloudが年に一度、世界中から開発者、IT専門家、ビジネスリーダー、そして私たちのようなパートナー企業などを招いて開催する、同社のフラグシップ カンファレンスです。
Google Cloudによる最新技術や戦略に関する基調講演「Keynote」が行われ、業界全体の注目を集めます。また、AI、データ分析、セキュリティ、インフラ構築など、多岐にわたるテーマで数百もの専門的なセッション「分科会」が開かれ、参加者は最新の知識やスキルを学ぶことができます。
「Google Cloud Next」は、単なる技術発表会ではありません。発表される新しいサービスや技術の方向性は、今後のクラウド活用のトレンドとなり、ビジネスやIT戦略にも少なからず影響を与える可能性があります。最新の成功事例や、他の企業がどのようにクラウドを活用して課題解決に取り組んでいるかを知ることも、何かのヒントに繋がるかもしれません。
まさに、クラウド技術の“今”と“未来”が集まる場所です。
本コラムでは、数あるプログラムの中でも、現地に行ったからこそ体験できる最新のソリューションや技術デモの広大な展示エリア「Showcase(ショーケース)」に焦点を当て、感じた熱気や技術トレンドをお届けしたいと思います。

「Google Cloud Next公式サイト」:https://cloud.withgoogle.com/next/25

Showcaseで見つけたソリューション紹介と傾向について

Showcaseでは、まだ日本で使用されていないソリューションを直に見ることができ、インタラクティブなデモ、お客様事例の紹介などを通じて海外におけるトレンドや傾向について、学ぶことができます。
今回、Showcase全体を通して、ほとんどのソリューションが、マルチプラットフォームを前提としていると感じました。単一のクラウド環境に閉じるのではなく、複数のプラットフォームを利用することを前提とし、それらを一つのコンソールで統合的に操作できるような仕組みが随所で提案されていました。日本でも最近は比較的馴染み深い「Terraform」などのIaC(Infrastructure as Code)ツールは、まさにこの思想を体現する良い例だと思います。さらに、これらのソリューションは、全体を通してAIを補助的に活用することで、開発者の負担を軽減させようとする意図が見て取れました。複数のプラットフォームに跨る複雑な運用を、AIの力を借りて効率化し、より戦略的な業務に開発者が集中できるような未来像が示唆されているのだと感じました。
実際に現地で話を聞いたソリューションから、いくつかピックアップして紹介します。

Showcase会場入り口

Harness

Harness」は、AIと機械学習を中核に据えた、次世代ソフトウェアデリバリープラットフォームです。現代の複雑なマルチクラウド環境におけるソフトウェア開発と運用を効率化し、開発者の負担を軽減、デリバリーサイクルの高速化、そして信頼性の高いソフトウェアリリースを実現しています。
類似製品として、「GitLab」があります。
「GitLab」は、Gitリポジトリの管理機能を中核とし、開発における計画から作成、検証、パッケージング、リリース、構成、監視、セキュリティまで、DevSecOpsライフサイクル全体を単一のアプリケーション内で完結させるという、統合性を持っています。このオールインワンのアプローチにより、ツール間の連携の手間を大幅に削減し、スムーズで効率的な開発ワークフローを実現できる点が大きな魅力です。
AIを活用した高度な自動化とマルチクラウド対応を求めるならHarness、統合的なDevSecOps環境を求めるならGitLabと、それぞれの強みに注目して選択を検討されると良いでしょう。

HASURA

「HASURA」とは、既存のデータベースやAPI(Application Programming Interface)のうえに、高速でリアルタイムなGraphQL APIを自動生成するオープンソースのエンジンであり、バックエンド開発者がデータ取得やAPIエンドポイントの設計に費やす時間を削減し、フロントエンド開発者がデータへのアクセスを効率的かつ迅速に行えるようにすることを目的としています。
既存の「PostgreSQL」、「MySQL」、「SQL Server」、「MongoDB」などのデータベースに対して、設定なしですぐにGraphQL APIを生成します。これにより、開発者はデータソースの詳細を気にすることなく、GraphQLの強力なクエリ機能を利用できます。データモデルに基づいて、迅速にGraphQL APIを構築したい場合や、フロントエンド開発者が必要なデータを自由に取得できる柔軟なAPIを提供したい場合などに良さそうです。こちらはAIを中核機能に据えているわけではありませんが、各データベースへのアクセス権限などもグラフィカルに表示されており、非常に分かりやすいツールという印象でした。

Alkira

Alkira」は、SDN(Software Defined Networking)の技術を活用したクラウドネットワークの構築と運用を簡素化するネットワーククラウドプラットフォームです。
従来のネットワーク構築・運用は、クラウド環境の複雑化に伴い、手動での設定や管理が煩雑になり、セキュリティやパフォーマンスの課題も増大していました。「Alkira」は、これらの課題を解決するために、サービスとしてのネットワーク(NaaS: Network as a Service)の考え方を基盤とした、革新的なソリューションです。
「Alkira」は、マルチクラウドネットワークの中核となる CXP (Cloud Exchange Point) を提供します。これはクラウドインフラ上に構築されたソフトウェアベースのコアルーターとして機能し、VM(バーチャルマシン)やエージェントを必要とせずにAWS、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなどとシームレスに統合できます。このCXPは、これらの多様なクラウド環境への展開が可能で、高いスケーラビリティと可用性を備えています。異なるクラウド環境やオンプレミス環境を、柔軟かつセキュアに接続・管理するための、クラウドネイティブなネットワーク基盤です。これにより、クラウド間の接続やポリシー管理を一元化することで複雑さを軽減し、運用効率を向上させます。マルチクラウドを前提とした場合、一箇所でネットワーク管理ができるのでお勧めです。

Egnyte

Egnyte」は、複数箇所に点在するユーザーデータを、セキュアにコラボレーションできるプラットフォームです。ファイル共有、同期、アクセス管理、データ保護などの機能を単一のプラットフォームで一元的に提供して、組織内のコンテンツを安全に管理し、効率的なコラボレーションを支援することを目的としています。
社内のファイルサーバーや、SaaS型のファイル共有サービスを複数利用している場合に、統合的なデータセキュリティとガバナンスを支援してくれる有効なツールと言えるでしょう。

Quantum Metric

Quantum Metric」は、単なる数値分析に留まらず、ウェブサイト、モバイルウェブ、ネイティブモバイルアプリケーション全体にわたるお客様の行動とデジタル体験に関する分析を提供するプラットフォームです。
企業が提供するECサイトなどのオンラインサービスにおいて、顧客がどのように操作しているかを分析し、操作に迷う箇所やエラー発生箇所など、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を低下させている可能性のある箇所を特定します。AIを活用した異常検出やセッション要約などの機能により、開発者は主要な課題を迅速に把握し、顧客体験の改善に繋げることができます。顧客体験の向上は、顧客満足度を高め、最終的にはコンバージョン率やリピート率の向上といったビジネス成果の促進に貢献します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
2日目に行われたDeveloper向けの基調講演でも、開発者を支援するAI Agentが多数紹介されていました。当社は、これらのテクノロジー思想をいち早く取り入れ、今後も開発プロセスやサービスをさらに進化させていきたいと考えています。マルチプラットフォームとAIの活用を前提とし、より効率的で価値の高いソリューションをお客様にお届けしてイノベーションを支援できるよう、今後も積極的に情報収集と技術習得に努めてまいります。

この記事の執筆者

清水 歩Ayumu Shimizu

ソリューション事業本部
インフラ事業部
インフライノベーション部
部長

Google Cloud