今年もオンラインで行われたVMworld 2021 Japan。当イベントのセッション内容をまとめてみました。
GENERAL SESSION 1 11月25日 10:00-11:00
全体MCを務めるのは、ヴイエムウェア株式会社 代表取締役社長の山中 直氏。まずは冒頭の挨拶で、今年のテーマ「imagine that -未来を描こう-」について、同社の意志を語られました。
山中氏が語るのは、「ユーザと共に」未来を描きたいということでした。その意志をひも解くかのように、2021年のハイライトが紹介されていきました。同社の大きな変換点は田町新オフィスへの移転でしたが、同社にとって新オフィスは、日本支社の第3章「クラウドとアプリケーションのモダナイゼーション」の象徴となるものでした。
新オフィス、また同社が掲げる「デジタルファウンデーション」という総合ビジョンによって、「クラウドとアプリケーションのモダナイゼーション」をより一層ユーザ目線で実現したいと、山中氏は熱量をもって伝えました。
また、昨年と同じく、初代デジタル大臣の平井 卓也氏からのビデオメッセージも紹介されました。クラウドバイデフォルトやマルチクラウドによって、常に最先端のセキュリティ、システムを使えるような環境を、国としても引き続き提供するために、VMwareへの期待値はますます高まっているというメッセージが伝えられ、オープニングセッションは幕を閉じました。
CEO ラグー・ラグラム氏の言葉
マイクは、VMware, Inc.の新CEOラグー氏に渡ります。
ラグー氏がVMware社に参加した2003年から、約18年をとおして取り組んできた「クラウド・ジャーニー」。その動きは、もはや世界経済を支える基盤といっても過言ではないかもしれません。中でも、マルチクラウド化は重要なキーワードであり、あらゆるビジネスシーンにおいて新たな価値を生み出すきっかけにもなっていると、ラグー氏は説明します。
ただし、マルチクラウド化はリスクの分散化や利便性の追求といったメリットはあるものの、一方ではデメリットも存在すると同氏は訴えます。開発者や管理者にとってはかなり複雑かつ、手間のかかるものであり、また利用者サイドからみれば、さまざまなソフトウェアをこれまで通りに使えなくなってしまうという懸念点が挙げられました。
VMware社は先のデメリットを払拭すべく、新たに「VMware Cross-Cloud Services」を発表しました。これは、あらゆるクラウドサービスアプリを、ビルド・実行・保護するための一連のサービスであり、以下3つの主要なメリットがあります。
・スピードの加速
・コスト削減
・高い柔軟性
この3つのメリットは、次の5つの主要なビルディングブロックで実現されています。
①クラウドネイティブアプリを構築・展開するための最先端プラットフォーム
②エンタープライズアプリを運用実行するためのクラウドインフラ
③異なるクラウド上のアプリパフォーマンスとコストをクラウド管理
④運用するマルチクラウド全体のセキュリティシステム
⑤分散する業務環境を支えるAnywhere Workspaceエッジに最適なアプリケーションをデプロイ・管理するためのエッジソリューション
さらにラグー氏は、このVMware Cross Cloud Servicesの要点を2つにまとめました。1つめはモジューラー型の高い柔軟性で、ユーザ任意のクラウドから最適なサービスを採用できること。2つめが多様な価値の提供で、大企業からベンチャーまでさまざまなお客様のニーズに応えられること、という2点です。
この新サービスを解説する中で、レストランの決済とソフトウェアを提供するToast社(SaaS企業)のケースが紹介されました。同社の顧客であるレストランが、1カ月で5万ドルのコスト削減に成功し、コロナ禍でも経営が大きく上向いたという成功事例が取り上げられました。
最後に改めてVMware社の意気込みとして、これからもマルチクラウド時代のビジネス推進に必要な「柔軟性」、そして「選択肢の提供」に努めていくことが熱弁され、最も関係性の高いユーザ企業の1つであるFedEx社の事例も紹介されました。
ここで、次の登壇者であるVMware,Inc. 社長のスミット・ダーワン氏へとバトンタッチされます。
スミット・ダーワン氏の言葉
スミット氏は、FedEx社の成功事例を改めて振り返り、さきほどラグー氏が挙げた5つの主要ビルディングブロックのうち、3つについて改めて説明が必要であるとして、解説を付け加えました。
①クラウドネイティブアプリを構築・展開するための最先端プラットフォームについて
VMware Tanzuは、開発者/IT管理者/クラウドのセンターオブエクセレンス(Cloud Center of Excellence:CCoE)の3者のニーズを全て満たすように設計されているので、スピードと管理性を保ちながら、クラウドネイティブアプリをビルドできる、と説明しました。
②エンタープライズアプリを運用実行するためのクラウドインフラについて
最大の成功事例としてインド国立証券取引所が挙げられ、どのようにオンプレミスのクラウドを拡張し、既存環境のキャパシティーや柔軟性を拡張できるのか、自社の既存アプリケーションをパブリッククラウド上で活用できるのかを説明しました。
また、戦略的パートナーであるアマゾン ウェブ サービス(AWS)、Microsoft、Google、IBM、Oracle、Alibabaなどとの協業を進め、これらの課題を乗り越えることで、結果的に世界各地100を超える地域での利用を可能にしたことを誇りに思っている、と付け加えました。
ちなみに、「VMware Cloudについて、①では、『ネイティブのパブリッククラウドより高価である』、②では、『VMwareとクラウド事業者の両方で料金が発生する』という誤解があるようだが、それらは全て間違いで、ユーザは安心して利用してほしい」との説明も加えています。
⑤分散する業務環境を支えるAnywhere Workspaceエッジに最適なアプリケーションをデプロイ・管理するためのエッジソリューションについて
コロナ禍における職場環境の急激な変化について「世界中のケースを目の当たりにしたことで、Anywhere Workspaceの新機能発表に至った」と説明しました。
新機能の内容としては、WMware Secure Access Service Edge(SASE)のイノベーションにより、Workspace ONEに統合されている、あらゆるセキュリティ要素をエッジに展開できるようになったとし、続けてポイントソリューションはもはや必要なくなったと、見解も述べられています。
最後に、改めてVMwareユーザへのコミットメントとして、「世界有数の強力なパートナー・エコシステムのもと、これからもイノベーションの加速につながる、信頼できる基盤を提供し続ける」と約束しました。
マイクは再びMCの山中氏へと渡り、ここからは、ラグー氏とスミット氏の指摘した3つの重要な領域(①のクラウドネイティブアプリケーションプラットフォーム、②のクラウドインフラ、⑤のセキュアなエッジとAnywhere Workspace)について、それぞれ日本のエキスパートからの解説が始まりました。
ヴイエムウェア株式会社マーケティング本部チーフストラテジスト アプリケーション&マルチクラウド 渡辺 隆氏
渡辺氏は、Kubernetesの利用状況から解説をスタート。「オープンソースのコンテナオーケストレーションプラットフォームであるKubernetesは、その利用状況について従業員1,000人規模以上の360社を対象として調査したところ、65%が本番環境で利用している」とのことでした。
オープンソースであるがゆえのKubernetesの選択肢の多さは、メリットとして挙げられます。しかし、その選択肢の多さゆえに、構築の難しさや学習の難しさがあることも否定できません。渡辺氏は、これらを解消するものとして「VMware Tanzu Community Edition」を紹介しました。同製品は、Kubernetesを中核とした無償コンテナアプリケーションの管理・実行に必要なオープンソースをVMwareが選択してパッケージ化した、Kubernetes学習用チュートリアル付きの無料ディストリビューションです。
さらに渡辺氏は、開発者側の手間を大幅に縮小するための機能を備えたTanzu Application Platform(現在ベータ版が利用可能)も紹介したうえで、最後に、従来型のレガシーシステムを採用している企業や組織のDX推進について触れ、それらを解消するApplication Transformer for VMware Tanzuについても説明しました。
「このツールによって、オンプレミスのvSphere環境やVMwareのクラウド型SDDCなど、vSphereベースの環境全体のアプリケーションを、簡単に発見分析できる」と伝えました。
ヴイエムウェア株式会社 クラウドプラットフォーム技術統括部 統括部長 古山 早苗氏
古山氏は、ユーザが快適かつ柔軟な環境でマルチクラウドをビジネスに役立てられるようになる、4つの重要なサービスを紹介しました。
①VMware Cloud with Tanzu services
Tanzuが実現するクラウドネイティブアプリのための環境を、VMware Cloudで利用可能とするサービス
②Project Cascade
宣言的な仕組みにより、VM Cloud上のリソースをシンプルなコマンドですぐに入手できるサービス
③VMware Cloud on AWSの新たなイノベーション
VMware Cloud with Tanzu services、VMware Cloud Disaster Recovery機能拡張、高度なセキュリティアドオン、よりインテリジェントなアベイラビリティゾーンの提供、大阪リージョンのサービス提供開始
④VMware Cloudプロバイダ
VMwareソブリンクラウドプログラムを紹介。顧客が主権を持つデータセキュリティの居住性、管轄権のコントロールをパートナーから提供可能に
また、オンプレミスへの拡張も進めており、ローカルクラウドのオプションとしてVMware Cloud on AWS Outpostsを北米地域から順次展開していることを発表(日本は時期が決定次第、お知らせするとのこと)。
さらに、Project Arcticとして、vSphere環境からVM Cloudを利用できる新機能についても紹介されるなど、目白押しの発表となりました。
最後にエッジへの取り組みとして、VMware Edge Compute Stackの展開を紹介。これは、仮想マシンとコンテナベースの統合化された専用のスタックであり、マルチクラウドへの接続によるデータ保護と、マルチクラウドの最新化を実現すると解説しました。
ヴイエムウェア株式会社 マーケティング本部 ソリューションマーケティングマネージャー 林 超逸氏
林氏はまず、Anywhere Workspaceについて、リモートワーク環境の急速な進展にともなう、さまざまな課題を網羅的に解決できると述べられました。
具体的には、Anywhere Workspaceを構成する3つのテクノロジー、①VMware Workspace ONE、②VMware Carbon black、③VMware SASEを連携することで、包括的なソリューションとして提供しているとのことです。
中でも、Workpspace ONE とWMware SASEの統合が重要な要素であることを指摘し、この統合によって、分散化された環境でも高度なセキュリティと管理体制の構築が実現できると述べています。今後もVMwareは、より簡単に、より迅速に、よりスマートに、これらをキーワードとして高度なセキュリティ機能を提供すると表明されました。
GENERAL SESSION1終了
GENERAL SESSION2 11月26日10:00-11:00
こちらも山中氏のプレゼンテーションにて開会されました。山中氏はメジャーリーガー大谷翔平選手の二刀流を引き合いに出し、昨今企業に求められるDXとは「攻め」と「守り」の両面性が不可欠であることを強調しました。
攻めの部分とは、新規事業開発やそれに見合った人材育成などが考えられ、守りの部分は既存のさまざまなアセットであり、それらの両立を目指す「ANDが求められる改革」が必要だと伝えます。
そして、本セッションで登壇されたエンタープライズ企業様、通信事業者様、政府・地方自治体様はそれぞれのセクターについて、「VMwareは、『AND』を提供することに成功している」と紹介しました。
それぞれのANDについて、
エンタープライズ企業様は、「VMware Tanzu」が攻め、「VMware Cloud」が守り。
通信事業者様は、「VMware SD-WAN」「VMware SASE」「VMware Telco Cloud Platform」が攻め、「VMware Telco Cloud」が守り。
そして政府・地方自治体様は、「安全かつ高品質な住民サービスを実現するクラウド」が攻め、「DXによる役所内の業務効率化」が守りに当たることを説明しました。
また、VMware Cross-Cloud Servicesは、このようなDX推進の前提となるサービスである旨も補足しました。
株式会社リコー 理事 デジタル戦略部 基盤開発統括センター 所長 小林 一則氏
続いて、エンタープライズ企業として本日の1人目のゲスト、株式会社リコーの小林氏が登壇し、ディスカッションが開始されました。
小林氏は、自身のミッションについて、技術面からリコー社のデジタルサービス会社への変革をけん引するものであると説明。具体的には、本年7月にリリースされた「仕事のAI」の「RICOH 品質分析サービス Standard for 食品業」が紹介され、リコー独自のAIによるカスタマーボイスの解析が経営におけるDXを促進したと説明しました。
また、リコー社内のDXについては「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」というスローガンのもと、自らの変革の必要性を説きました。お客様にDXによる「ハッピー」をお届けするために、リコーも同じく攻守双方の両立と実践が大切である、と締めています。ちなみにリコー社は今年、クラウド化を強く推し進めており、オンプレミスの約半分を移行させる予定とのことです。
株式会社NTTドコモ 執行役員 5G・IoTビジネス部長 坪谷 寿一氏
次に通信事業者としてNTTドコモ執行役員の坪谷氏が登壇。NTTドコモの「ドコモ5Gオープンクラウド」や「ドコモオープンクラウド」には、「VMware vSphere」「VMware vSAN」「VMware Cloud Foundation on VxRail」を導入されており、両社の関係性が紹介されました。
5Gはこれからの通信事業における中核の1つを成しており、坪谷氏は「ドコモ5Gスクエア」という顧客による5G体験環境を展開しています。これを全国各地にあるドコモショップのような共創の場として拡散し、新しい付加価値を社会に提供していきたい」と、今後の展望を述べられました。
同社は、5G市場の中でもとりわけ医療、建設、XR、映像の分野を重視しており、建設機器の遠隔操作や遠隔医療などに大きな可能性を見出しています。また、5Gという最先端テクノロジーによる新たなビジネスモデル構築に際して、VMwareと共に歩んでいきたいという思いも語られました。
北海道知事 鈴木 直道氏
最後に、政府・地方自治体として北海道知事の鈴木直道氏がオンラインで登壇されました。
冒頭、鈴木知事より、北海道の産業における従来からの強みである農業と、最先端IoTの活用について説明がありました。ドローンや無人自動運転トラクターなどの活用によるスマート農業の先進的な取り組みにより、全国屈指の人口減少と過疎化という負の課題の解決に積極的に取り組んでいることが紹介されました。
また、北海道庁内の業務効率化と課題についても触れ、リモートワーク推進のための高度なセキュリティの構築の部分で、VMwareの協力を仰いでいる旨を述べられました。
最後に鈴木知事より、「デジタル人材の育成と確保が大きな課題となっており、この部分においてVMwareによる新たな取り組みをお願いしたい」との言葉があり、山中氏はこれに対して、勉強会の開催とエコシステム構築支援を提案されました。
GENERAL SESSION2終了
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