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Microsoft BuildにみるHoloLens(ホロレンズ)の進化

Windows Mixed Reality

マルチセンス/マルチデバイスの体験

Microsoft Build 2018では、前回触れた「Intelligence Cloud, Intelligence Edge」というコンセプトのなか、構成技術として「ユビキタスコンピューティング」「AI」「マルチセンス/マルチデバイス」がありました。
話の中心はIoTを表すユビキタスコンピューティングやAIでしたが、私が特に注目したのは「マルチセンス/マルチデバイス」です。IoT、AIといった技術をWindowsデバイスのみならず、Android、iOSはもちろん、エッジデバイス、マイクロコントローラーまで広範囲のデバイスに対応しています。
そのなかでも特徴的なデバイスとして挙げられるのが、Microsoft HoloLens(ホロレンズ)。この HoloLensに関して、遠隔地にいる専門家から直感的な作業支援・支持を得ることができる「Microsoft Remote Assist」、導入予定の機器・機材をホログラムで導入対象空間に実際に配置することにより配置計画を立てられる「Microsoft Layout」といったアプリの提供が発表されました。

ビジネス活用の可能性が高まるHoloLens(ホロレンズ)

可能性が拡がるHoloLens(ホロレンズ)

HoloLens は、Microsoft Build 2015で具体的なシーンが初めて紹介され、Microsoft Build 2016で開発者向けに出荷が開始、Microsoft Build 2017では、実際の業務に対するいくつかの導入事例が紹介され、Microsoft Build 2018のパートナーブースでは、HoloLens を活用したいくつかのソリューションを体験できるようになりました。毎年の Build で着実に進捗していく、象徴的なデバイスと考えています。

HoloLens(ホロレンズ)の実際の画像

Microsoft HoloLens は、頭に装着するゴーグル型のデバイスです。PC 相当のスペックが搭載されており、単体で動作します。他のデバイスとのケーブル接続も不要なため、歩行範囲に制限がありません。ゴーグル型で両手がフリーになり、ワイヤレスで自身のケーブルにつまずくこともなく自由に歩き回れるといったことから、工場などの作業現場での利用が期待できます。
また、レンズ部分が透過型になっているため、現実世界をそのまま見ることができます。その上にホログラムを合成することで、現実世界に直接情報を付加できます。
VR(仮想現実)、AR(拡張現実)といった種別がありますが、HoloLensが分類されるのは、どちらかというとAR。すべてを仮想世界で表現するのではなく、現実世界と仮想世界を融合して表現するためです。ここでは厳密な定義には触れませんが、Microsoft社はMR(複合現実:Mixed Reality)という言葉で表現しています。
MRで可能になることといえば、例えば現実世界の部屋の模様替えをしたいと思ったとき、瞬時に、部屋の壁やカーテンの色や模様をホログラムで変更し、変更後のイメージをその場で、同一スケールで確認できる…といったイメージです。

私は、目に見えないものを可視化することに、最大の価値があると考えています。温度、風の流れ、音は人の目で見ることができません。こういった自然現象を目に見える形で現実空間に表現することにより、直感的な理解を得ることができるようになります。
このような非常に高い可能性をもった技術、デバイスは今まで存在しなかったのではないでしょうか。
今までのICTといえば、オフィスワークの業務改善を目的とするものがほとんどでした。しかしHoloLens は、オフィスワークではない、製造業、建設業等の現場作業の業務改善を実現できます。
今までにない技術、デバイスを活用することにより、これまで ICT の適用が難しかった業務領域に対しても業務改善が実現可能となります。

パートナー企業による体験ブース

Microsoft Build 2018のパートナーブースでは、HoloLensを活用したソリューションを提供するベンダーが7社も出展しており、それぞれ実際に体験することができました。
例えば、回路の組み立て手順を案内するソリューションでは、作業手順のビデオを空間に表示できるだけでなく、次の作業手順を実際の回路に重ねてホログラムの矢印などで指示されます。このため専門知識がなくても、高度な作業を直感的な指示のもと実施できます。

HoloLens(ホロレンズ)による回路の組み立ての作業案内

他にも、車のボディのデザインを遠隔地のメンバー間で実施する事例では、遠隔地のメンバーが、アバターとして現実空間にホログラムとして表現されていました。遠隔地のアバターの視線も現実空間で確認できるので、遠隔地のメンバーが今そこにいるように感じられる、直感的なコミュニケーションの実現を体験できました。

その他には、医療用のエコー画像を実際の体に重ね合わせて表示するという体験も。通常、エコー画像といえばモニターに表示して確認するもの。この場合はエコーを当てている箇所とモニターを交互に見ながら作業をする必要があります。HoloLens を活用すれば、エコーを当てている箇所、実際の体の部分にエコー画像を重ねて表示できるので、交互に見る手間を削減し、より直感的な状態の確認を行えます。

よく使われる業務シーンをパッケージ化

HoloLens の販売開始から約 2 年が経ち、Microsoft 社では、よく利用される業務シーンの情報を収集し、分類しているそうです。そのデータによると、遠隔地からの専門家の支援、設置計画、トレーニングと開発、製品説明等の業務にHoloLensが多く利用されているとのことでした。
HoloLens を業務で利用するためには、その業務に適したアプリを開発する必要があります。HoloLensだけでは、これまで紹介してきたような事例は実現できず、HoloLens上で実行するアプリを別途開発する必要があります。
そういったなか、HoloLensがよく利用される業務においては、Microsoft社が標準的なアプリを提供するという発表がありました。それが冒頭でお伝えした「Microsoft Remote Assist」「Microsoft Layout」です。

Microsoft Remote Assist

Microsoft Remote Assistは、HoloLensを装着したユーザーの視界を遠隔地の専門家に共有します。遠隔地にいる専門家は、問題が発生している現場にいるかのような視界で、現場への作業支援・指示ができます。さらには、遠隔地から、現場の空間へペン描画を行うことができるので、より直接的な作業支援・指示を実現できます。
これにより、専門的な知識をもたない作業員でも、遠隔地からの専門家の支援により、問題を正確にとらえ、迅速なトラブルシューティングが可能となります。

Microsoft Layout

Microsoft Layoutは、工場などに新規の機材・機器を導入する際、図面による配置計画を行うのではなく、実際の配置対象場所に対してホログラムの機材・機器を配置し、直感的な配置計画を行うことができます。
これにより、機材・機器の周辺の動線が十分に確保されているか、前工程、後工程の作業との連続性が確保されているかを、実際に歩き回って確認できます。図面による配置計画よりも、実際の作業員の視点に立った配置計画の方が、効率よく実現できるでしょう。

「Microsoft Remote Assist」や「Microsoft Layout」が提供する範囲で、業務上の課題が解決できる場合は、非常に強力なソリューションとなりそうです。

富士ソフトとしての役割

エンドユーザーへの導入支援と、働き方改革EXPOへの出展

HoloLensに取り組んだエンドユーザー向けの事例として、室内環境可視化技術があります。
室内空間の温度や気流分布を可視化するためにHoloLensを使い、空調設計者や施工者、建物利用者間でのイメージを共有したことで、全員が同じ認識を容易にもつことができました。
このような新しい技術を導入する場合、情報システム部門ではコストなどを優先してしまう部分があります。しかし今回は、企画や研究開発部門の担当者が関わることで、新しい技術をスムーズに導入できました。

さらに、2018年7月に開催された「働き方改革EXPO」にも富士ソフトとしてブースを出展しました。この場でもHoloLens導入支援サービスとして展示を行いましたが、いくつかの選択肢から、お客様のニーズに合わせて適切なものを提供していきたいと考えています。
まずは、「Microsoft Remote Assist」や「Microsoft Layout」といった標準アプリで課題を解決できないかを検討します。アプリをイチから開発する場合では、きめ細やかなニーズに対応できる反面、コストや導入までの時間がかかるという側面もあります。まずは、標準アプリで検討、場合によっては試験導入を行い、それでも解決できない場合はアプリ開発を検討します。
標準アプリの導入といっても、操作方法から、どのような機能があるのか、効果的なのか、運用はどうするのか…など、導入にあたっても解決すべきこともいくつかあります。
そのような標準アプリの利活用や運用のためのトレーニングや導入支援などについても、サービスを提供していければと考えています。
また、競合となる製品も徐々に登場しているため、これらを事前に調査することで、課題の内容によっては、HoloLens以外の選択肢もご案内できるように新しいテクノロジーの検証を進めているところです。

顧客のコアコンピタンスを実現する開発

「Microsoft Remote Assist」や「Microsoft Layout」は、その対象業務の一般的な部分においては、比較的低コストで、かつスピーディに導入できます。
なるべく標準アプリで実現できた方が良いと考えていますが、標準アプリで実現できない課題が、お客様のコアコンピタンスとなり得る競合優位性があるものであれば、十分な検討の上、アプリ開発を選択します。
私のチームでは、特にMicrosoft技術において、これらの各種選択肢から、もれなくお客様のニーズに合わせて適切な解決策をご提案できるように、最新の技術動向をリサーチし、実践レベルでの各種検証を実施しています。
最新の技術をどこよりも早くご提供し、高度化するお客様ニーズに適切に対応できるよう日々取り組んでいるのです。

HoloLens 導入支援サービスについて、詳しくはこちら。
HoloLens 導入支援サービス

 

この記事の執筆者

増田 裕正Hiromasa Masuda

ソリューション事業本部
MS事業部 MSサービス推進室
部長 / エグゼクティブフェロー

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